メソッド総論でお伝えしたとおり、対面コミュニケーションは「見せるもの」です。聞き手は、話し手を見ています。
その中で、相手といちばん直接につながるのが「目」です。この記事では、目のコミュニケーション機能を開発する「目のメソッド」と、エクササイズのポイントをご紹介します。
1.相手の目を見る

コミュニケーションをするとき、目をどう使うか。答えは「相手の目を見る」です。理由は3つあります。
- 伝える意思を示すため、フォーカスの合った目をする。
- 「あなたに伝えている」とアイコンタクトする。
- 相手の反応が分かり、コミュニケーションできる。
聴衆のひとりひとりの目を見る
スピーチをしているとき、スピーカーはどこを見ればいいのでしょうか。答えはひとつ。聴衆を見てください。目の前の5人から50人くらいの聴衆にも、一人ひとりにアイコンタクトをします。
会場全体に漠然と目を向けるだけでは、目に意志の力が備わりません。聞いている一人ひとりに「私に話をしてくれている」と感じてもらうことが大事です。
2.慣れていないスピーカーの4つの課題

アイコンタクトは、中途半端に使うと逆効果になります。人前で話すことに慣れていない方には、次の4つの課題がよく見られます。
課題1 聴衆を見ずに話す
目のやり場に困り、会場をキョロキョロ。落ち着きのない印象を与えます。
課題2 顔を見ても、目を見ない
顔を向けるだけでは、目に表情が生まれません。
課題3 目を見る時間が短い
ちらっと盗み見るように映ります。すぐに視線を外すと「目を逸らした」と受け止められます。
課題4 目を見るだけで、信号を送らない
無表情では「冷たい人」という印象を与えてしまいます。
正しく的確なアイコンタクトを、実践で身につけましょう。そのための練習が、次の目のエクササイズです。
3.目のエクササイズの全体像

目のコミュニケーション機能を開発するエクササイズは、4つあります。
- アイコンタクトの基本エクササイズ
- 目が主役の表情エクササイズ
- 目で思いを伝えるリフレイン・エクササイズ
- 目で思いを伝えるサイレント・エクササイズ
準備運動:まぶたの筋力をアップする
目を見開いて、目に表情を表すためには、まぶたの筋肉を使います。目の上に「半時計の文字盤」があるイメージで、9時から3時までの間に目を動かしましょう。9時を見る、12時を見る、3時を見る。顔は動かさず、目だけを動かします。
4.エクササイズ① アイコンタクトの基本

見る・頷く・尋ねる・興味・微笑む・感謝。言葉を使わず、目だけで6つの信号を送る練習です。
- 目を見る:相手と柔らかく目を合わせる
- 目で頷く:「いいですね」と同意・賛同を伝える
- 目で尋ねる:「分かりますか?」と目だけで尋ねる
- 目で興味を示す:「うわぁ、面白そう!」と目を見開く
- 目で微笑む:「素敵な方ですね!」と好意を表す
- 目で感謝を表す:目を合わせたまま「ありがとうございます」
目を見ている長さは、どれくらい?
二人で向き合い、AさんがBさんに「ここまでのところは、理解していただけましたか。」と話します。途中で視線を手元に外したときの違和感を、確かめてみてください。
目を見るのは、文の終わりの「。」まで。途中で目を逸らすと、相手は置いてきぼりにされたように感じます。
5.エクササイズ② 目が主役の表情


台詞とともに目を大きく動かして、相手に伝わる表情をつくります。喜怒哀楽、驚き、賞賛、同意、賛同、真剣、説得、自信、信頼、決意、陳謝。目が変わると、顔全体の表情が変わります。
- 目を見張る:「うわぁ、凄いな!」→ 目が見開かれていく
- 目が点になる:「え!まさか!?」→ リアクションは瞬間的に
- 目を細める:「可愛いですねぇ〜」
- 目を輝かせる:「素敵ですね!!」「考えただけでワクワクしますね!」
- 目でも納得する:「なるほど!よく分かりました」
- 目で考える:「それって、どういうことでしょうかね?」
- 目で戸惑う:「う〜ん、どういうことなんでしょうか?」
- 目つきを鋭く:「その問題は許しません!」
- 目に力を込める:「大丈夫です!」
- 真剣な眼差し:「国境なき医師団には敬意を表します」
- 弱り目:「まいったなぁ〜」
- 感謝の眼差し:「助かりました!ありがとうございます!」
6.エクササイズ③ 目で思いを伝えるリフレイン

言葉とともに、目でも言う。そして言い終わった後も、目で2度繰り返すエクササイズです。
- 言葉+目:言葉で伝える
- 目でもう一度:口を閉じたまま、目で同じ気持ちをもう一度
- 目でもう一度:さらにもう一度、目だけで伝える
- 挨拶の目:「はじめまして。よろしくお願いします」(名刺交換のときにも)
- 共感の目:「よく、分かります」
- 賛同の目:「いいと思いますよ」
- 心配の目:「それは、ご心配ですね」
言い終わった後も目が気持ちを伝え続けることで、言葉が相手の心に残ります。
7.エクササイズ④ 目で思いを伝えるサイレント

言葉とともに、目でも言う。そして最後は、目だけでも思いを伝えられるようにするエクササイズです。
- 気づかう:「ここまでのところは理解していただけましたか?」
- 感謝する:「お話を聞いていただいて、ありがとうございます。」
- ワクワクを伝える:「こうしてお話ししていて本当に楽しいです。」
- 深く静かに喜ぶ:「あなたにお会いできてとても嬉しいです。」
まとめ:見ることは、相手を大切にすること
私たちのテキストには、子どもたちのための「コミュニケーションの教材」として、有名な詩の一節を紹介しています。
どこから世界をのぞこうと、見るとはかすかに愛すること
見ることは、見る対象に関心があるから、見てみたいと思うこと。逆に見ないということは、関心も興味もないということです。目の前に人がいるのに、ちゃんとその人を見なかったら、その人を無視したことになり、相手を傷つけてしまうことにもつながります。
恥ずかしい、照れくさいと言いわけをして、目の前の人をちゃんと見ないのは、やっぱり失礼なこと。だから、相手を傷つけないためにも、「見る」練習をしてください。目の前の人を正面からきちんと見て、その人の目に「あなたは素敵な人ですね!」と伝えてあげてください。
ちゃんと見ることから、もっと人や世の中とつながっていくことができるはずです。
一般社団法人 日本プレゼン・スピーチ能力検定協会

